東北初の快挙『源泉かけ流し宣言』
高湯温泉観光協会(遠藤淳一会長)と高湯温泉旅館協同組合(同理事長)は平成22年6月1日、高湯温泉の「源泉かけ流し宣言」を発表しました。 これは全国8番目の宣言で、当日は、遠藤会長らが佐藤雄平福島県知事を訪ね、高らかに宣誓しました。


高湯温泉は福島県福島市の西側、吾妻山麓の山懐にあり、400年の歴史を持つ小さいながら独自の方針を持った地域づくりをしている白く濁った特徴のある湯質の温泉地です。
源泉が10カ所ほどあり毎分3,258リットルを湧出しております。
この豊富なお湯を源泉かけ流しでお客様に楽しんでいただけることが私共の誇りです。
高湯を大切に思ってくださる皆様、公の機関の皆様のご尽力により、ここ10年あまりの間に温泉・自然をより身近に楽しんでいただける様になってまいりました。
400年もの長い間、温泉に人集い、笑いがあり、涙があり、出会いがあり、別れがあり、とたくさんの人々と係わってきたことを思いますと、今、言葉にしがたいものを感じずにはいられません。
ゆえに、高湯が昔からのありのままの自然の中の本物の温泉ではなくてはならないのです。
豊かな吾妻の自然に長い間育まれて滾々と湧き出してくる温泉をこれからもずっと皆様に楽しんでいただける様、守り続けていく所存です。
私共、高湯温泉すべての施設は、これからもこの温泉に誇りを持ち、温泉に集われる皆様に恥じぬよう、源泉かけ流しを宣言いたします。
平成22年6月1日
高湯温泉観光協会 高湯温泉旅館協同組合
東北初「源泉かけ流し宣言」

"現代版湯治場"再生を目指した活動をしている「全国温泉地サミット」にて、高湯温泉は平成22年6月1日、東北初の「源泉かけ流し宣言」発表した。
「源泉かけ流し」とは源泉から自然湧出または機械的に汲み上げた温泉を浴槽に加水・加温せず供給し、あふれ出た湯を循環させず排水する給湯を指す。 温泉地が「源泉かけ流し宣言」をすることは温泉街にある入浴・宿泊施設の全てが、その規定のもとに営業している必要があり、この宣言認定には提唱者である温泉博士、松田忠徳教授の調査検証を受けなければならない。

現在「源泉かけ流し宣言」を行った温泉地は北海道では川湯・摩周温泉、ぬかびら源泉郷、栃木県の奥塩原温泉、新潟県の関温泉、長野県の野沢温泉、奈良県の十津川温泉郷、そして大分県の長湯温泉、宝泉寺温泉など10ヵ所で、高湯温泉は8番目、東北初となっています。(2011.11月現在)


泉 質 酸性・含硫黄(硫化水素型)
-アルミニウム・カルシウム硫酸塩温泉(硫黄泉)
(低張性-酸性-高温泉)
泉 温 42℃~51℃
主な効用 高血圧症、動脈硬化症、末梢循環障害、リウマチ、糖尿病、慢性中毒症、にきび、しもやけ、やけど、切きず、婦人病、不妊症、水虫、あせも、胃腸病、神経痛、慢性湿疹、便秘、脱肛、皮フ病、手足多汗症、アトピー性皮膚炎 など

インタビュー 私たちと高湯温泉をつなぐ信頼の架け橋

「源泉かけ流し宣言」の提唱者で、今回の宣言にも立ち会った、温泉学の第一人者、札幌国際大学の松田忠德教授に、高湯温泉の魅力や同宣言について、お話を伺いました。


地の利、人の利が生んだ“究極の温泉”

─松田教授にとって、高湯温泉の印象は?
「全国3,100余りの温泉地にパーフェクトに近い温泉はいくつかありますが、その中でも理想的な究極の温泉です」

─これまで数多くの温泉に浸かった経験のある松田教授が"究極"と言い切るポイントを教えてください。
「まず、人間の手を加えずに温泉が自然と湧き出している"自然湧出"泉であるという点。それから、温泉そのものを浴槽からかけ流す"100%源泉かけ流し"だという点。そして、何よりも自然の落差だけを利用して浴槽まで引湯してきて"自然流下"が大半だという点。この3点が温泉地全体でそろっているところは非常に珍しい。これはもう、江戸時代のレベル。天然記念物に近い」

─高湯には、地の利があったということですか?
「さらに、温泉経営者の温泉に対する意識が抜群に高かった。山の自然環境を守らなければ自然湧出のお湯も出てこなくなる。その一級の自然を温泉街全体で守り続けている姿勢は大したものだと思います」

日本の温泉の信頼を取り戻す
─高湯温泉は全国で8番目の「源泉かけ流し宣言」となりました。松田教授はこの宣言の提唱者ということですが、宣言が誕生した経緯を教えてください。
「昨今の、いわゆる"温泉偽装問題"などから端を発して、日本人の温泉業界に対する信頼感がどんどん崩れてきたことが起因の一つです。水道水を沸かしただけのお湯を温泉だと言い張っていた有名温泉地がごくわずかあったからと言って、ほかのところに、お宅は本当の温泉ですか?なんていちいち聞かないのが本来、日本の文化というもの。文化というのはこのように信頼の上で成り立っているんです。しかし、それが崩れてしまった。そこで、長い年月をかけてつくり出された信頼を取り戻す作業を行う必要が出てきた。その一つのキーワードが"源泉かけ流し"なのです。消費者に分かりやすく、一つの温泉地全体で温泉の品質を保証しますと提示したんです」

信頼で成り立つ「源泉かけ流し宣言」
─ちなみに"源泉かけ流し"について、改めて説明していただいてもよろしいですか。
「"源泉"というのは、温泉そのものを指します。要するに、人間の手が加わっていない温泉のことです。それをそのまま浴槽に供給して、浴槽からかけ流す状態のことを"源泉かけ流し"というんですね」
「若い世代を中心に源泉かけ流しの温泉を求める消費者が多いのも事実。全国の温泉施設は日帰りも含めて約2万2,000〜3,000軒。その中で源泉かけ流しのところは3割程度。数が少ないので、消費者にとっては探し出すのが面倒だ。そこで、一つの温泉地全体が源泉かけ流しだと言ったほうが消費者からすれば分かりやすい。『源泉かけ流し宣言』は、温泉地側からすれば信頼を回復する一つの手立て。しかもそれは、消費者の支持があってのものなんです」

─この宣言を認定する第三機関のようなものはあるんですか?
「いいえ。本来、温泉地が自主的に行って構わないもので、特に強制するものでもないし、規約があるわけでもない。温泉組合なり地域なりが宣言することによって、自らを律することにつながり、もっと高い品質のものを保証していく。さらに県知事の前で宣言することで、温泉地自体も気合いが入るし、消費者にもより信頼を持ってもらえる。そういう、いかにも日本人的なものなんですよ。私は温泉学者として、ここは宣言するにふさわしいところだからとアドバイスしたりバックアップしたりするだけです」

─そうすると、「源泉かけ流し宣言」をするのに数値などの明確な基準は無いんですね。
「そうなんです。信頼しているお客さんに対して、温泉の質はもちろん、接客なども含めて、温泉地が応えてあげるということで成り立っている。それこそが日本の文化度合いの高さなのです。機械でいろいろ測定してみないと分からないような温泉に入って、本当に癒されますか?日本の温泉って最終的に癒されるものでしょ?ただ、本当にレベルの高い温泉を推薦しています」


肉体的にも精神的にも生きる力を高める
─確かに、温泉で得られるものは数値では測れませんからね。
「高湯温泉は硫黄泉なので、泉質で言えば皮膚病などに効果がある、いわゆる"美肌の湯"になりますが、私はさらに踏み込んだ効果を考えています。つまり、温泉は私たちの免疫力、生きる力を心身ともに高めてくれる。それがますます求められる時代になっています。"心身再生の場"というのが温泉のキーワードだと私は思います。肉体的にも精神的にも癒される状態を提供することが、今の時代、温泉の大きな役割の一つではないでしょうか」
「私たちが『ああ、気持ちいい』と心底思える温泉は、肉体的にも何らかの効果があるはず。精神と肉体は一体なんです。例えば、うつは心の風邪といわれているでしょ?風邪は万病のもと。風邪を引かないような肉体をつくること、精神的な力を持つことが、私たちの生きる力の根幹になるんです。病気になってから薬で治すよりも、普段から質の高い温泉で健康な体をつくるというのが、本来発展した国の考えることだと思いますね」

─"心身再生の場"としての高湯温泉はいかがですか?
「何と言っても、この温泉地に近づいてきたら硫黄の匂いがするでしょ?これは天然の癒しのハーブなんですよ。そして乳白色の湯を見て、目からも癒される。それから肌で湯の感触を確かめたり…。来てみて、そうして五感で味わってもらえば、高湯温泉の魅力はすぐわかるはずですよ!」


福島、東北、日本、そしてアジアの“心身再生の場”に
─松田教授は今後、高湯温泉がどのように発展していくことを望んでいますか?
「福島県民はもちろん、東北の人たち、日本の人たちそしてアジアの人たちにとっての"心身再生の場"を目指してほしいですね。『源泉かけ流し宣言』を行ったことで、高湯温泉はそのような高い意識を常に持っていますよ、と宣言したのと同じ。だから、もっと多くの人たちに高湯温泉を知ってもらって、この良さを共有してもらいたい。私は温泉学者として、高湯温泉は全国でも最も"外れの少ない"温泉地だと保証します。福島県民は、地元にそんな素晴らしい温泉があることを自慢していい。逆に、それを知らない福島県民がいたとしたら、恥じるべきです(笑)」

─地元にこんな財産があるんですものね。
「全国の温泉を見回してみると、東北はとても条件に恵まれています。お湯が良かったり、食材が良かったり、自然環境が良かったり。もちろん人柄も。でも、なんとなく元気がない。それは、それぞれの温泉地の結束力に問題がありそうだ。そういう意味では、高湯温泉が『源泉かけ流し宣言』をきっかけに、それを成し得たというのは大きい事だと思います。これが福島はもちろん、東北全体の刺激になればいいと思いますよ。最終的には、この宣言をきっかけに全国の温泉のレベルが上がっていってもたえたら、うれしいですよね」

松田忠德(まつだ・ただのり)
1949年、北海道洞爺湖温泉生まれ。文学博士。札幌国際大学観光学部教授(温泉学)。
崇城大学客員教授、モンゴル国立大学客員教授、旅行作家、ウェブマガジン「毎日が温泉」編集長。東京外国語大学院修了。
"温泉教授"の異名で知られる温泉学の第一人者で、全国の温泉地再生の指導を行っている。現在、モンゴル国立健康科学大学(旧医科大学)大学院博士課程(温泉医学)で健康温泉学の研究を続けている。
著書は約140冊。最新刊に『知るほどハマル!温泉の化学』(技術評論社)、『温泉に入ると病気にならない』(PHP新書)、『美人力を高める温泉術』(講談社文庫)、『温泉力』(ちくま文庫)など。
DVD『温泉教授・松田忠德の日本百名湯』全10巻(日本経済新聞出版社)、
ニンテンドーDSソフト『全国どこでも温泉手帳』(マーベラスエンターテイメント)の監修も務める。