高湯温泉と吾妻の冬キノコ <2>

福島市側から見る吾妻連峰は庭塚地区を麓として、標高200メートルの上姥堂から標高1949メートルの一切経山まで一気に立ち上がる山塊である。

標高1600メートルの浄土平までは県道70号線と磐梯吾妻スカイラインを使い、福島駅西口からわずか1時間で到着する。つまり走る毎に標高差による植物景が車窓から見る間に変わり、ドライブには飽きさせない風景が続くわけである。
また国立公園の保護法による森林相は自然のままで、麓の里山まで雑木林はよく残されており、菌茸類も図鑑の如く多種多様を採取できる。
高湯温泉に逗留しながら執筆した芥川賞作家の庄野潤三(しょうの・じゅんぞう)2009年9月21日没・作品「なめこ採り」にあるように山住みの人にとっては、茸は山からの収穫物である。売って直接の糧とするのではなく、お客の膳の一品として提供するのであった。これは山菜も同様で、別称「アオモノ採り」と言われるように、山里では野菜代わりの貴重な食物源でもあった。

さて今回の茸採りは12月5日であった。今時期冬に何が採れるのか?というと収穫はヒラタケ、ムキタケ、エノキタケ、ナメコ、ヤナギモダシ(ヌメリヤナギタケ)であり、つまり木に出る茸ばかりである。本来12月だと雪中のキノコ採りになるのだが、今年は暖かく、なんとフキノトウが花咲いていた(長年山に入っているが初めて)。そういえば地元の古老は、産み付けられたカマキリの卵の位置がかなり低いので、今年は雪不足であろうと話していたが(カマキリはその年の積雪量を予測して、卵を雪に埋もれない高さに産み付けると言われている)、はたしてどうなる事やら。雪が少ない年は、山の保水不足により、山の物も、川の物も、里の物も不作になると言われている。

ハケゴ(腰カゴ)に2つ採れた(ハケゴでの収穫はキノコが壊れないし、網目から胞子がこぼれて次世代の種となると言われている)ので始末に40分かかったのだが、山菜も茸も、食べられるようにするにはこの始末が大変なのである。であるから採取者本人が始末せず、取ってくるだけで後は女房に任せるなんてのは言語道断で、「また取ってきたのっ!」などと忌みられるのがオチである。釣った岩魚の腸処理も同様で、その点を下の息子(川小僧)には厳しく躾けてあるので、夏の夕方に仕事を終えて帰宅すると我が家では、鮎やヤマメの唐揚げが出来上がっているというありさまである。
このような山での収穫をを生業としている地域(秋田・山形などの山間部、福島では奥会津など)では、始末も家族総出での分業となっている。これらの地域では年寄りにも役割があるので、年配者はきわめて元気で口数も多い。
このように地域によっては茸も山菜も生活の糧である場合があるので、遊びで採取するには、それ相応の気遣いが必要であり、場合によっては一切手をつけてはいけない場所がある。そういう場所には車両の停めやすい所などに結界(ロープや立て札)が張ってあるので容易に理解できる。幸い吾妻山系にはそういう入合い地(決め事のある場所)は少ない。
さて今回のキノコ汁であるが、茸のヌメリと出汁で十分である。ここはやはり葱と絹ごし豆腐のすくいでザックリと決めたい。あくまでもキノコを楽しむ汁である。茸が勿体ないとニンジンや牛蒡など具沢山にすると、ケンチン汁になってしまうのでご用心。煮込んだうどんや餅も良く合う。

【写真】〜画像上 冬のフキノトウ
    〜画像下 地キノコ汁

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