そばの話し
そばの話し
檜枝岐村は標高約千メートル、川沿いの細長い寒冷地で、 周りを二千メートル級の山々に囲まれています。 その為昔から、稲作が出来ず、粟・稗などの雑穀類しか食べられませんでした。 なかでも、そばは栽培が楽で、質もとても良かったので、そば粉をいろいろに工夫して食べてきました。
「裁ちそば」とは
「裁ちそば」とは
村で採れたそば粉を使った「そば」は繋ぎを一切入れず、 熱湯と水だけで捏ねあげ、2mmくらいに薄く熨したものを何枚も重ねて、 手を定規にして包丁で引き切ります。
その切り方が布を裁ちきる様に似ていることから「裁ちそば」と言われるようになりました。
裁ちそばは延圧が弱いので、とても切れやすく、伸びやすいそばです。 出されたおそばは、水の切れないうちにお召し上がりください。
裁ちそばができるまで
捏ねあげる
・ハンゾウと呼ばれる捏ね鉢にそば粉を入れ、適量の熱湯を箸で混ぜながら入れる。
・粉全体にお湯が混ざったら、水を回しかけ本格的に捏ねつける。(でっちる)
・綺麗に捏ねあがったら、幾つかの団子にわけさらによく捏ねあげる。(こでっちという)
板の上に平たくした生地をのせる
・よく捏ねたら回しながら平たくして、粉を打った延し板にのせる。
・団子の上にも粉を打ち太い麺棒で伸していく。
のし
・左右の手加減で生地を回しながら伸していく。
・薄く平均に伸すのが名人芸。
・途中何度か生地の下に粉を打って、約2mmくらいの薄さに伸していく。
別の延し板に広げる
・80cm位に伸したら、麺棒に巻きつけて別の延し板に広げる。
・これを何度も繰り返し重ねていく。
・重ねる時は前の生地に粉を打っておき重ねる。
切り
・左手を定規にして包丁を寝かせながら引き切る。
・左手は包丁に合わせて手前に引いていく。
延し板の端に寄せる
・1人分を切ったら指で延し板の端に寄せていく。
・中央の辺りを持って二つ折りにして紙に包む。
そば打ち道具
そば打ちの道具
・ハンゾウ:栃の木をくり抜き彫り後を残した捏ね鉢。
・麺棒:シナの木。直径10cm位。
・延し板:2枚。
・包丁:よく切れる長めの菜切包丁。
そば粉について
そばの花
そばの花
そば粉は、地元檜枝岐村のそばが一番ですが、 村は耕地が少なく取れる量に限りがありますので、 まる家では昔ながらの在来種のそばを 近隣の舘岩地区に契約栽培で頼んでいます。
現在檜枝岐村では、キリンテの国道沿いや、 R352号線で新潟方面に下って行った開墾地などでそばの栽培をしています。
玄そば
玄そば
ロール製法
昔は各家々が石臼を使って挽いていましたが、現在では村のJAで製粉してもらいます。
昭和30年代後半からロール製法と云って、機械でそばを挽くことが出来るようになりました。 近年になっては石臼を回す機械が出来、石臼製法もできるようになりました。
まる家では、昔ながらの裁ちそばの風味を味わえるようロール挽きにこだわって一番粉・ 二番粉を分けずに全て挽きぐるみにして使っています。
新そばの時期少し緑色がかったそばは、香りも滑らかな味わいも最高の美味しさになります。
そば湯
そば湯
そば粉の成分
そば粉は、白米に比べ主成分であるでんぷん質の他に、必須アミノ酸、ミネラル、 必須栄養素などいろいろな栄養成分が豊富に含まれている優れた食品です。
ポリフェノールの一種であるルチンは、毛細血管を強化させ、高血圧・糖尿病などの予防効果があります。 また、肉体疲労・口内炎に効果のあるビタミンB1や、老化を防ぐビタミンE、 糖質・脂質・タンパク質の代謝に不可欠な、ビタミンB3(ナイアシン)なども多く含まれており、 食物繊維は白米の2.5倍もあり便秘を予防する整腸作用があります。 そば粉のでんぷんは、他の穀類のでんぷんよりジアスターゼによる消化吸収が早いので、 そばをたくさん食べても胃にもたれずお腹に優しいと云われます。
タンパク質や栄養素の多くは水溶性なので、そばの茹で汁には多くの栄養成分が含まれています。 ナイアシン・コリンは肝臓を保護すると共に、解毒作用を促し、アルコールの分解を早めます。
薬味について
薬味
当店はそばの薬味に、自家製の「シソの実漬け」を添えています。 「シソの実漬け」は、昔から各家庭で漬けられていたもので、 らっきょ・茗荷・青南蛮・シソの実・シソの葉などを多めの塩で漬けます。 使う時に全部混ぜて、細かく刻んで薬味にします。
南蛮の辛味、シソやらっきょ・茗荷の風味が独特な味わいで、 そばの薬味のほかご飯や豆腐、納豆などにのせても美味しいです。
そばつゆについて
そばつゆ
当店では、「かえし」と「だし汁」を合わせて作ります。 「だし汁」は数種類の鰹節や昆布でとります。
岩魚が沢山獲れた昔は、岩魚を焼いてさらに囲炉裏で干して保存しました。 その岩魚(干しイオという)を使ってだし汁をとったそうです。 干した岩魚の風味が独特な味わいだったようです。